仕事以外で自分のモノを売った経験のある人は意外と少ないです。使いかけの鉛筆や消しゴムすら他人に売ったことのない人がほとんどです。
それにもかかわらず、中古マンションの売却では、いきなり他人に大きな金額のモノを売る経験することになるのです。
そのため、中古マンションの売却には、入念な計画が必要です。中古マンションの売却は、まず相場を知ることから始まります。
今回の記事では、相場を知りマンション売却を成功させるポイントをまとめました。
1.中古マンションはまずその価値を知ることから
1-1.査定を行う理由
もし、あなたが使いかけの鉛筆を他人に売るとしたら、いくらで売るでしょうか。
鉛筆くらいであれば、かなりの方が、「タダであげるよ」と言うかもしれません。逆に鉛筆に値段を付けてくれと言われても難しいと思います。
タダであげるということは、売却ではなく贈与です。売却となると値段を付けて取引することになりますが、考えてみると、実はこの値付けが一番難しいと言えます。
鉛筆なら元々が安いため、タダでも納得いく人も多いでしょう。
しかしながら、値段の高い中古マンションはタダという訳にはいきません。
そこでまず自分のマンションがいくらくらいで売れそうなのか、査定を行って相場を調べることから行う必要があります。
査定を行って相場を知る理由は大きく①値付けと②資金計画、③税金予想の3つのために行います。それぞれの理由について、見ていきます。
1-2.理由①:値付け
1つ目の理由は値付けです。値付けが査定を行う最も大きな理由です。
中古マンションの売却は、適正な売出価格を設定することから始まります。
中古マンションを出来るだけ高く売りたいというのは、売主の本音ですが、相場よりも著しく高い金額で売却を開始してしまうと、買手からの反応が全くありません。
理由としては、今では買主がインターネットを使って他の物件の価格と比較することが簡単にできてしまうからです。
買主は数千万円をも支払って中古マンションを購入するため、必死に安い物件を探しています。
インターネットでは、価格帯で物件を絞り込んで検索することも可能です。
このような状況で、相場から逸脱した価格設定を行っている物件は、買主の検討の遡上に載りません。
中古マンションの売却は、まずは適正な売出価格の設定を行って、検討物件から漏れないようにすることが重要です。
適正な価格設定を行うためには、査定が第一歩になります。
1-3.理由②:資金計画
2つ目の理由は資金計画を立てるためです。およその売却価格を事前に把握しておくことで、売却後の資金計画が立てられます。
特に買替の場合、売却価格を次に購入する頭金として予定しているのであれば、どれくらいの頭金が手に入りそうかの予想を立てておく必要があります。
売却金額次第で、次に買い替える物件の金額も決まってくるため、売却金額の予想を立てることが資金計画を行う上で重要になります。
また住宅ローン残高が大きい場合は、売却額で住宅ローンが返せるかどうか、知る必要もあります。
売却金額よりも住宅ローン残高が高ければ、手持ちの預貯金と合わせて、抵当権を抹消する必要が出てきます。
場合によっては、売却を見送るという判断もあり得ます。
また買替の場合は住宅ローン残高と売却額の差額を、次に購入する物件のローンと合わせて借りる「住み替えローン」の検討もあります。
住宅ローンとの兼ね合いも、資金計画の重要な部分ですので、事前に売却予想額は知る必要があるのです。
1-4.理由③:税金予想
3つ目としては、税金の予想を立てるためにも査定は必要です。
個人が一定の要件を満たす居住用財産を売却した時、譲渡益が出た場合は所得税が発生します。
一方で、譲渡損失が発生した場合には、「居住用財産の買換えにかかる譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」または「居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」により所得税の還付を受けることが可能となります。
売却後、税金を支払わなければならないのか、もしくは税金が戻ってくるのか、その違いは大きいです。
バブル崩壊後は、中古マンションの価格は購入時よりも下がっているケースが多いため、多くの方は譲渡損失が発生する可能性が有ります。
どれくらいの損失が出そうか、売却の前に把握しておくことが、売却後の確定申告作業にも役立つのです。
2.売却の成功の秘訣の4つのポイント
ここからは中古マンションの売却を成功させるための4つの秘訣について見ていきます。
2-1.適正価格による売出
最初の秘訣は、適正価格による売出です。特に高過ぎる価格設定をしてしまうと、売却が上手く行きません。
中古マンションの売却には、3ヶ月程度の時間がかかるのが一般的です。適正な価格設定とは、3ヶ月以内に売却可能な金額のことを言います。
3ヶ月以上経過しても売却できない場合は、価格の見直しを行うことが通常です。高すぎる値段設定は、時間の無駄になってしまいます。
一方で売却を開始して1~2週間で売れてしまうような価格は、安過ぎる価格設定と言えます。
早く安く売ることを「売り急ぎ」と言います。売り急ぎは、例えば緊急にお金が必要になった人が仕方なく行う売却です。
売り急ぐ特別な事情がなければ、わざわざ安く早く売る必要もありません。適正価格による売出を行って、本来の価値で売却することがポイントです。
2-2.ローン残高との兼ね合い
2つ目の成功の秘訣はローン残高との兼ね合いです。やはり売却額によってローン残高を返済できる状態が理想的です。
仮に3ヶ月以内に適正価格で売却できたとしても、その後のローン残高が大きく、返済に苦しむようでは売却では成功したとは言えません。
ローン残高ら大きい場合は、本当に今売却すべきかどうか、見直すことも重要なことです。
どうしても引越をしなければならない時は、引越し先では家を借りて、今のマンションを人に貸して賃料収入を得るという考えもあります。
賃料収入によって少しでもローン残高を減らして、時間をかけて売却するのも一つの手です。
ローン残高が減り、売却によって楽に抵当権を抹消できる状態になれば、売却に成功したと言えるでしょう。
2-3.買替計画の立案
3つ目の成功の秘訣は買替計画の立案です。これは買替を行う人のみに関係する話です。
買替には、①今の家を売却してから新しい家を購入する「売り先行」と、
②新しい家を購入してから今の家を売却する「買い先行」の2種類があります。
売り先行と買い先行には、それぞれメリットとデメリットがあります。
新しい家を購入するための頭金が既にあるような方は、買い先行を選択する方が多いです。
買い先行では新しい家をじっくりと探すことができ、また空家の状態で中古マンションを売却できるというメリットがあります。
買い先行の方が、空き家のため売却しやすくなります。
買い先行か売り先行かどちらかを選択するかは、十分な買替計画を立てて決める必要があります。
2-4.取得費の把握
4つ目としては取得費の把握です。一定の要件を満たす居住用財産を売却した時は、以下の式で計算される課税譲渡所得によって、所得税の発生の有無が決定します。
課税譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 取得費用 - 3,000万円の特別控除
ここで、取得費とは売却する不動産の取得費(建物は減価償却後)となります。
取得費が不明の場合には、譲渡価額の5%が概算取得費として計算されてしまうため、課税譲渡所得がプラスとなり、所得税が発生しまうケースがあります。
無駄な税金を発生させないためには、購入時の売買契約書が残っているか、最初に確認しておきましょう。
さいごに
大きな金額の中古マンションを売却するには計画性が必要です。計画を立てるには、売却予想額を把握することが第一歩になります。
まずは中古マンションの価値を知り、計画性を持った売却活動を開始するのが良いでしょう。